超音波とは、なんでしょう
一般に音波とは、空気中の伝搬を意味し、超音波とは人間の可聴周波数以上の音域(20KHz以上)を言います。
しかし現在工業分野で使用されている超音波は広範囲に渡っており一般に言われている意味とは別に、「音波とは、弾性によって起こる波動のことであり、超音波とは人間の耳で聞くことを目的としない音波のことである」と定義されています。
尚、KHz(キロヘルツ)とは、周波数を意味し、20KHzは1秒間に2万回振動を繰り返している状態を言います。
どんなに優れた感覚を持っている方も20KHz以上の周波数はまったく感じることができないとされています。一般の人は16KHz以上の周波数はほとんど感じることができません。つまり超音波は人間には感じることのできない周波数領域です。
その周波数で加工を行えば、非常に静かで且つ効率的な加工が可能です。たとえば刃物を超音波振動させると刃先は高速で振動することになり通常の数倍の切れ味が得られます。
そのほか、溶着・洗浄・剥離・研磨・穿孔など、さまざまな分野で利用されています。
こんなところに使われています
洗浄
超音波シミ抜き機を使えば洗濯では落ちないしつこい汚れもきれいに落とせます。皆さんがクリーニング屋さんに出された衣料のしつこいシミは超音波で落としているんですよ。
めがね屋さんの店頭にある超音波めがね洗浄機も、普通では落とせない細かい部分まできれいに汚れを落とせます。
乳化
水と油、普通は決して混ざり合わないこの二つも、超音波を加えると完全な混合物に早変わり、白濁して牛乳のようになり、もう元に戻りません。化粧品や化学合成、様々な分野で乳化技術は活躍しています。
溶着
樹脂や金属同士を重ね合わせて超音波振動させると、お互いが擦りあわされ摩擦熱が発生し溶け合い接着します。
IT産業を支える半導体の製造には、ワイヤーボンダーという超音波溶着器が活躍しています。そのほか、プラスチック製品の接着などでも大活躍。
切断
ナイフを超音波振動させると切れ味が数倍向上します。切断面が美しく商品価値が向上するので繊維、食品、紙、樹脂・・・いろいろな場面で活躍しています。
バレンタインデー、一年で一番チョコレートが活躍するときです。生チョコレートの切断は超音波ナイフが最適!いま、来年のバレンタインデーに向けて超音波ナイフが大活躍しています。
穴あけ
石、コンクリート、宝石、セラミックス・・・。普通のドリルでは硬くて刃が立たないものは、超音波にお任せ。工事現場や工場で活躍しています。
金属の切削
薄すぎる、細すぎる、硬すぎる、刃がすぐに磨耗してしまう、・・・。金属の切削は加工の困難な材料で溢れています。従来は切削が不可能とされていた材料も超音波振動が解決しています。
超音波振動切削と呼ばれるこの加工方法は、わが国が誇る独創技術です。付加価値の高い加工、技術立国日本の将来を担う、これからますます発達するであろう技術です。
超音波発生の仕組み
電圧を加えると伸びたり縮んだりするピエゾ素子と呼ばれるセラミックの一種を、金属でできたホーンAとホーンBで挟み込みボルトを用いて強く締めこみます。
このピエゾ素子及びホーンの間に駆動端子とアース端子を設け、この端子に交流電圧を加えるとホーンAの先端部分は高速振動します。従ってホーンAの先端部分にたとえばナイフを装着しておけば非常に切れ味の良い超音波ナイフとなります。これがランジュバン型振動子と呼ばれる超音波振動発生器で、大きな出力が容易に得られ各種超音波加工装置に広く使用されております。
ピエゾ素子にも様々な形態があり、組み合わせを工夫することで色々な振動を得ることが可能です。